悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2023-07-11から1日間の記事一覧

8)悟りと漸悟 8-2-2-1)雑念の減少と集中力の増大

8-2-2-1)雑念の減少と集中力の増大 雑念(執着、煩悩、そして自我)が減少したことで、つまり気を散らす原因が減少することで、重要な思考に持続的に強く深く集中でき、その結果目の前にある問題への解決能力が増強増大します。雑念が減少していくので、過去(…

8)悟りと漸悟 8-2-1-3)自我消滅か自我肥大か

8-2-1-3)自我消滅か自我肥大か 臨済は、修行中に「瞑想により仏陀や如来が現れたときは槍で突き刺せ」「仏見たなら仏を殺せ」と教えています。明晰夢状態での出来事ではないかと思います。瞑想中に神格を持つものとの一体感を持った結果、消滅させるべき自我を逆…

8)悟りと漸悟 8-2-1-2)自我を越え出る感覚(自我意識)

8-2-1-2)自我を越え出る感覚(自我意識) 悟りに近づくにつれて、仏教を信じる人々は、自分という感覚(意識)が広い空間いっぱいに拡大したと感じます。あるいは空間に漂い出す感覚を覚えます。科学の世界で、電磁気で脳の右側頭頂葉の「角回」を刺激すると、被験…

8)悟りと漸悟 8-2-1-1)自我感覚(自我意識)の変化

8)悟りと漸悟 8-2-1-1)自我感覚(自我意識)の変化あらためて自我意識とは何でしょうか。「意志、知覚、思考、記憶、感情、決断、行為など」を「自己同一的な主体」として遂行し、これらを「他者や外界から区別して自分自身のものだと意識」する態度です。私は、自我…

8)悟りと漸悟 8-2-0-1)漸悟への過程の概略

8-2-0-1)漸悟への過程の概略 先ずは漸悟への過程の概要だけを述べますと、 1)自我は、自分と関係あるものと無関係なものを区別し、関係するものに強い執着(関心)を示します。強い強固な狭い「自我」「自我意識」という感覚(壁)が徐々に薄れて行きます。一言で言…

8)悟りと漸悟 8-2-0-0)漸悟への過程

8-2-0-0)漸悟への過程 ここからは漸悟、時間をかけてじっくりと修行(瞑想、坐禅など)をして悟りに近づくにつれてのいくつかの相で現れる変化を見て行きます。というのは、頓悟は仏教修行に専念する者でないと困難ではないかと感じるからです。それに対して漸…

8)悟りと漸悟 8-1-3)キリスト教神学者エックハルト

8-1-3)キリスト教神学者エックハルト マイスター・エックハルトは、中世ドイツのキリスト教神学者で神秘主義者です。キリスト教神秘主義の源泉は、パウロやヨハネのキリスト体験です。パウロの場合は、イエスの死を死んだ後にイエスの生を生きるという体験で…

8)悟りと漸悟 8-1-2)イスラム神秘主義

8-1-2)イスラム神秘主義 イスラム教において精神修養に重きを置いた宗派が9世紀以降に生まれ、修行によって自我(自我意識)を滅却し、忘我の恍惚の中で、二元的対立を超えた神との神秘的合一を究極的な目標とする内面化運動を、特に「イスラム神秘主義」という…

8)悟りと漸悟 8-1-1)エジプトの女神イシスを覆うヴェールの物語

8-1-1)エジプトの女神イシスを覆うヴェールの物語 エジプト神話には、豊穣と知恵の象徴である女神イシス(大地の神ゲブを父に天空の女神ヌトを母に持つ、背中にトビの翼[空間の超越]を持った女神、生と死を操る強大な魔力[時間の超越]を持つ)がいます。豊穣の…

8)悟りと漸悟 8-1-0)仏教以外での悟りの心境

8-1-0)仏教以外での悟りの心境 仏性は人類普遍に持ち合わせいますから、洋の東西を問わず悟り現象は生じます。ということで様々な表現で言い表されています。例えば、覚醒(仏性の開花)、ワンネス(無我によって達成する自他一如の世界)、自己超越(自我から無…

8)悟りと漸悟 8-0)悟りとは、悟るとは

8-0)悟りとは、悟るとは 悟りについては、前章の「7)仏性と修行」章の「7-6)悟りとは」節で幾分か説明しました。そこでは仏教に限定した悟りを紹介しましたので、ここからは更に詳しく多方面から説明して行きます。 悟るとは、迷い(自我)の世界を超え出て、真理(…

7)仏性と修行 7-7)何故煩悩を持っているのか

7-7)何故煩悩を持っているのか 認知機能を「自我から無我へ」と切り換えることで悟りを開きますが、もう一つの側面として、心が「煩悩から清浄(涅槃)へ」へと切り替わることについて考えて行きます。「煩悩の炎の吹き消された悟りの世界(涅槃)は、静やかな安らぎ…

7)仏性と修行 7-6)悟りとは

7-6)悟りとは 悟りについて次の「8)悟り」章で詳しく述べますが、ここでは道元の悟りについて述べていきます。上で述べたように道元は修行への疑問を抱いたまま中国に渡り修行を行います。禅師の元での修行中に、一人の修行僧が居眠りをしていたのを如浄禅師が…

7)仏性と修行 7-5-3)意識とオートポイエーシス理論

7-5-3)意識とオートポイエーシス理論 意識の拡大に関しては、ウィキペディアの「オートポイエーシス」理論内「心的システム」頃に、「感知しうるものだけが心的システムの構成素」であり「心的システムはみずからの作動をつうじて、感知しうるもの/しえないものの境…

7)仏性と修行 7-5-2)釈迦の修行の中身(後半)

7-5-2)釈迦の修行の中身(後半) それによって自我(意識)は無我(涅槃寂静)にどんどんと近づいて行きます。遂に自我(脳=心の一部)から無我(脳=心の全体)となった時点が悟りの開花です。 私達の自我は、瞑想という方法の内で集中瞑想による能動性意識(トップダ…

7)仏性と修行 7-5-1)釈迦の修行の中身(前半)

7-5-1)釈迦の修行の中身(前半) あらためて修行についてまとめると、仏教において瞑想を、1)サマタ瞑想(止の行、精神集中)と、2)ヴィパッサナー瞑想(観の行、洞察、智慧)とに分けます。止は、「禅定、定、サマーディ、静慮、禅那、禅定、思惟修」に当たり、観は…