悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

8)悟りと漸悟 8-1-3)キリスト教神学者エックハルト

8-1-3)キリスト教神学者エックハルト

マイスター・エックハルトは、中世ドイツのキリスト教神学者で神秘主義者です。キリスト教神秘主義の源泉は、パウロやヨハネのキリスト体験です。パウロの場合は、イエスの死を死んだ後にイエスの生を生きるという体験です。

注)パウロのイエス体験は、次章「9)成長」で簡単に言及します。

エックハルトはいう、「汝の自己から離れ、神の自己に溶け込め。さすれば、汝の自己と神の自己が完全に一つの自己となる。神と共にある汝は、神がまだ存在しない存在となり、名前無き無なることを理解するであろう」という。

「極限の無になることで自分を消し去ったとき、内面における神の力が発現し、被造物の内にありながら創造の以前より存在する魂の火花が働き、魂の根底に神の子の誕生(神の子としての転生)が起こる」という。

「被造物から生まれたものは被造物に悩まされるが、被造物にあらざる神の子として生まれ変わったものは被造物による悩みを持ちようがない」という。「被造物」を自我と言い換え、「神の子として生まれ変わったもの」を無我と言い換え、「悩みを持ちようがない」を「涅槃寂静」と言い換えると自我から無我への悟り(涅槃寂静)と同じです。

「離脱はあらゆる物から脱却し、神をみずからの内に迎え入れて神を神たらしめる」という。これは道元の心身脱落を思い浮かべます。