悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

9)成長とそれを促進する理論・方法 9-9-1)カウンセリングとは

9-9-1)カウンセリングとは

西欧で生まれた、心理的成長を促す方法としてカウンセリングがあります。ここではロジャースによって創始された「クライエント中心療法(来談者中心療法)」を中心に、カウンセリングを説明します。

先ずはカウンセリングの目的・目標から始めます。カウンセリングとは、「停滞するクライエントを再び成長へと向かわせる契機を提供する試み」です。

カウンセラー(心理師)が、クライエント(来談者)に対して原則として明確な解決策を直ちに提示はしません。例え提供したとしてもそれを成長に生かすことができないからです。というのは、成長できないのは知的な部分(情報的な無知)に原因があるからではないからです。既に解決となる情報群は実際には心の中にあるけれども、絡み合っているが故に苦悩をしている状況を少しずつ解きほぐして意識化する段階にまで至って初めて真の解決といえるからです。比喩的にいえば、その時の自我には大きすぎる食べ物(成長の糧だが取り込めないので苦悩する元)を砕いて飲み込んで消化吸収して血肉化するレベルへ細分化する過程を同行するのがカウンセリングです。

ということで知的な解決策を提供せずに、カウンセリングの場においてクライエントが自ら(の課題)に向き合い、両者の共同作業を通じて何回も「新しい理解や洞察に自発的にたどり着き」を繰り返して、カウンセリングが終結します。その後で、カウンセリングの経験を生かしてクライエントが実生活上の問題や悩みに「主体的に相対して行ける」ように導くことが、カウンセリングの目的であるからです。というのは、自我の認知能力が拡大することで、今まで対処できなかった問題を自己解決できるように導くのがカウンセリングの役割だからです。ごく簡単にいえば自我の認知能力を高めることです。