悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

4)脳と前頭前野 4-1)自我の芽生え

4-1)自我の芽生え

自我の芽生えに関しては「2)「自我」と「島皮質」」で、既に自我を取り上げてきましたが、あらためて脳と関連させながら自我について考えて行きます。

ところで幼い子がメタ認知が機能し始めるのはいつ頃からでしょうか。メタ認知(前頭前野)能力と言語能力との結びつきは強く、言語能力が未発達である新生児や乳児にはまだメタ認知能力も育っていません。というよりもそもそも認知機能そのものがまだまだ完成していません。人では2歳ぐらいにまず自我(認知機能の拠点)が芽生えます。

注)言語能力を支える言語野(大脳新皮質)は、運動性言語中枢(発話機能)が前頭葉(運動野)に、聴覚性言語中枢(聞き言葉機能)と感覚性言語中枢(言語理解力)が側頭葉にあります。 視覚性言語中枢(文字言語)が後頭葉にあります。文法処理の時に普遍的に働く中枢(文法中枢)が左脳の前頭葉にあります。文章理解に必要とされる中枢も左脳の前頭葉にあります。

メタ認知能力も言語能力も多くを前頭葉(特に前頭前野)に頼っています。その前頭葉は、5歳から本格的に始まり20歳までの間に発達します。そして前頭葉の発達は概ね13歳頃(思春期)がピークです。それに対して、基礎能力(特に身体面)である脳幹・間脳・小脳(身体の脳)は0歳から始まり5歳頃に発達のピークを向かえます。

「自我」の芽生えというと、「自分でする」と自分の「意志を表示」するようになること(自己主張・意思表示)を指します。これは、「行動や意識の主体」となる「自我意識の芽生え」でもあります。

それを第一反抗期とも呼ばれます。自我(自己主張・主体感)が芽生えているのに前頭葉(抑制機能)の働き(制御機能)がいまだ弱いのが要因で第一反抗期(自己主張はするが自己抑制はできない)が発生します。反抗期(反抗心)によって自我を育成確立させ、やがて自立(自己抑制)へとつながる成長を遂げていきます。5歳頃には脳の重さは1.2kgと大人(脳重:1,400g前後)に近づきます。

注1)心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解を包括して「認知」という。更には、注意・識別・学習能力・抽象化能力・創造・計画・方向感覚・実行制御なども含まれます。その内で思考・判断・記憶・創造・感情などが精神活動です。心の機能、認知活動、精神活動はイコールではないがかなり似通った機能(活動)です。

注2)親(保護者)が子どもをほめるほど、後部島皮質(運動目的の行動の知覚)の灰白質(神経細胞密集地)の体積が大きくなります。