悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-1-3-1)能動性注意と集中力

3-1-3-1)能動性注意と集中力

目標達成に欠かせない注意力の制御には、1)「気を散らすものを無視する力」(選択と集中)と、2)「衝動を抑える力」(抑制)の2つで成り立ちます。これら2つの能力はそれぞれ独立しているものの、青斑核(ノルアドレナリン神経)の活動が、前頭葉(特に前頭前野)にある2つの異なる領域を目標にしてその神経活動を調節する形で、どちらの能力も制御しています。

1)「集中力」(選択と集中)を高める「青斑核―前頭前野背内側部」の回路と、2)「衝動を抑制」する「青斑核―前頭眼窩腹外側部」の回路で構成された、2つの分離可能な「青斑核―大脳新皮質」回路が協調的に働き、注意力による行動の制御を調節しています。つまり「能動的注意」(選択と集中、抑制)は前頭前野が担っています。

それ以外にも青斑核(橋の背側に位置する小さな神経核)は、大脳、視床、海馬、小脳、脊髄など中枢の主要なほとんどの脳領域にノルアドレナリン線維を投射し、これらの部位を制御支配します。具体的には、覚醒程度の制御、能動性注意、ストレス制御、痛みの中枢性抑制、姿勢制御など多様な機能に関与します。青斑核は、脳を標的とする中枢性の交感神経系で、ストレスによって生じる覚醒レベルの上昇や不安などの情動反応を誘発させます。青斑核は、痛みを中枢性に抑制する下行性抑制系としても働きます。つまり青斑核は観察型の坐禅や瞑想にとって重要な脳部位です。