悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-1-2-1)「メタ認知」

3)「意識」と「その三つの理論」

3-1-2-1)「メタ認知」

認知機能は、1)認知機能(認知作業層)とその認知機能を更に上位から俯瞰的に認知する「メタ認知」機能(管理監督層)とに分かれます。このメタ認知機能も、メタ記憶と同じ前頭前野の外側にある「背外側前頭前野」が主導します。なお「背内側前頭前野」は、他人の心を客観(メタ認知)的に見る機能を持っている場所だともいわれます。つまり背外側・背内側前頭前野は、自も他も上位からモニターする機能を持っています。

例えば自分が今本を読んでいるとわかっている、自分が今悲しい気持ちでいることに気づいているのは、前頭前野のメタ認知が機能しているからです。認知認識機能や作業は、大脳新皮質の後半部位(頭頂葉、側頭葉、後頭葉)で処理されますが、メタ認知機能や作業は、前頭葉(特に前頭前野)で実行されます。つまりメタ認知的なモニタリングと制御は、他の皮質領野(大脳新皮質後半部位)からの入力やフィードバックを受けた前頭前野における機能だといえます。

メタ認知機能(能力)が確立する思春期には、自分を観察するメタ認知機能が過剰に作動して自意識過剰に陥りやすいです。またこの年代は他人の視線がとても気になる時期でもあります。

自分の思考(認知)を客体的に観察するメタ認知課題実行時にも前頭極(前頭前野の最先端:目標志向性、メタ認知、未来予測)は活性化します。明晰夢を伴うレム睡眠は、そうではないレム睡眠に比べて前頭前野の脳領域が活性化しています。

目覚めている時には、夢と現実を区別できますが、夢見中では夢を現実だと思っています。夢をみている間は、メタ認知機能を担う前頭前野が不活発で、現実との違いを認識できないためです。メタ認知的な観察と制御は、他の皮質領野からの入力情報やフィードバックを受けた前頭前野における機能だからです。