悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-1-2-2)メタ認知と夢

3-1-2-2)メタ認知と夢

小学校の低学年頃から自分の記憶を客観(上位階層から)的に判断するメタ記憶(記憶を記憶する機能)が育ちはじめ、例えば自分の記憶と夢の内容を自己観察できるようになります。でなければ、記憶が夢での記憶なのか現実世界での記憶なのか区別がつかなくなってしまいます。

注)メタ記憶(ログ記録管理機能)とは、記憶内容ではなく、どこでとかいつとかの記憶履歴を取っています。記憶に関するメモ機能です。

明晰夢とメタ認知は、どちらもメタ記憶とメタ認知観察脳部位(前頭前野)を使っています。というのは、明晰夢とは、夢を見ている(認知している)時に「今は夢の中にいる」と認識(メタ認知機能)している状態での夢見だからです。夢を見ている自分と半ばそれは夢だと気づいている自分とが両立しています。

レム(夢見)睡眠中に活性化する脳領域には、1)島皮質や帯状皮質などのサリエンス・ネットワーク(顕著性ネットワーク)領域、2)扁桃体などの情動生成領域、3)海馬や眼窩前頭前野などの記憶を司る領域、4)イメージの形成に必須の視覚領域です。

それに対して、前頭前野(実は眼窩前頭前野も前頭前野に含まれる)と随意運動を制御する前頭葉運動野領域は、活性化しません。

夢を見るとは、まず頭頂葉(立体視)と後頭葉(視覚野)にある領域が興奮することで、脳に残っている記憶を集め、覚醒時と同じように体験させる仕組みです。この夢の中枢は、楔前部(頭頂葉)、帯状束、脳梁膨大後部皮質です。ちなみに覚醒中にその脳部位を刺激すると、自分が異世界に現実から遊離(体外離脱)したような気分になるそうです。その脳部位とは、右側頭頂葉の角回(視覚や空間認知)で、そこを刺激すると意識が2メートルほど舞い上がり、天井付近からベッドに寝ている自分が見えるという現象が起こります。

意識を失うことなく身体的に眠りに落ちる、即ち意識は起きて、身体は眠っている状態は、自発的体外離脱の原因となります。私は悟り現象はこれ(幽体離脱)だと思います。

注)帯状回下部に、帯状束があり、大脳辺縁系の各領域を結びつける役割を果たしている。帯状束は脳梁に沿いながら、前部帯状回、後部帯状回、海馬傍回と連絡しています。