悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-4-1-0)島皮質とは

2-4-1-0)島皮質とは

島皮質は、大脳新皮質の奥深くに埋没し、他の部位に完全に覆われています。具体的には前頭葉、側頭葉、頭頂葉、大脳基底核に囲まれた場所にあります。その位置は、脳全体をバランスよく協調的に働かせるために必要な、情報中継集積拠点として機能するのに最適な場所です。

島皮質は、行動発現、知覚、内受容感覚、情動など「認知機能」に関する活動がみられます。より具体的にいえば、味覚、嗅覚、触覚、痛覚、内臓覚などの諸感覚が集まって来ます。更には上位階層の機能、例えば報酬(価値)、社会的な痛み、社会的情動、共感、自己意識まで関係しています。

島皮質は、上位階層の眼窩前頭前野、正中前頭前野、前部帯状皮質と線維(配線コードで)連絡を有しています。それ以外にも、嗅内皮質、海馬、扁桃体、線条体、体性感覚野、運動野とも連絡しています。

島皮質は、個々の脳部位とだけでなく、顕著性ネットワークの中心領域として活動します。顕著性ネットワークは、感情、認知、他の脳内ネットワークの制御、身体情報の知覚など様々な機能を持ちます。

注1)島皮質の直下には島皮質と並行して「前障」が広がっています。前障はほとんど全ての大脳皮質領野(特に前頭葉・「島皮質」・嗅内野など高次脳機能)と双方向に神経連絡しています。睡眠中や休息中の大脳皮質で見られる徐波活動を制御します。

注2)顕著性ネットワークについては、「6)無我」章の「6-3-2)脳内には三大ネットワーク」で説明します。

注3)瞑想する人は右の島皮質後部が有意に厚い。紡錘形神経細胞は右の島皮質に高密度で存在します。右島皮質は、自身の脈拍を感じたり、他者の痛みに共感する能力と関係します。

注4)右の島皮質には、情報処理を速める特殊な神経細胞が左脳より多く存在します。

注5)島皮質は、空間的注意に関与しており、左脳よりも右脳の島皮質が優位に働きます。

注)島皮質は、交感神経系と副交感神経系の調節を通じて自律神経機能を制御します。