悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-4-1-1)島皮質と外界の五感と内受容感覚

2-4-1-1)島皮質と外界の五感と内受容感覚

島皮質は、自分の外側から来る感覚(五感)と内側からの感覚(内受容感覚)をつなぎます。例えば内向(注意を自らの心身に向け)して、心拍や呼吸といった身体内部(内臓感覚)の状態に関する感覚である内受容感覚を意識する場合に島皮質の活動は高まります。なおその感覚は大脳新皮質頭頂葉でも感じます。具体的には島皮質は第二次体性感覚野と連絡を有し、触覚に関する情報を受容します。前部島皮質は主観的な感覚を、後部島皮質は客観的な感覚を扱っています。

島皮質は、このように自己の身体状態を意識し、そこに更に俯瞰的な文脈(背景)や状況(現況)とも組み合わせて、主観的感情を生み出します。

運動中の島皮質の働きとして、生理的恒常性維持のため内受容感覚を受け取り、中枢性疲労(意識性疲労感)を発生させて運動を停止させる信号を送ります。仏教などで苦行をする目的は、この島皮質の主観的疲労感を発出するタイミングを遅らせることにあります。あるいは疲労感の発出リミットを引き延ばすことにあると感じます。島皮質の停止信号の発出を止める(抑制する、引き延ばす)のは前頭前野(意志)です。だから苦行は島皮質と同時に前頭前野(堪え忍ぶ意志)をも鍛えます。しかしこれは疲労感を無効にして、過労からうつ病へと追いやる危険性もあります。

要するに、島皮質は自分(自分の体と精神)という存在が一つになる場所、それらを意識する場所です。

注)内部の生理的な状態を捉える感覚システムを内受容感覚という。