悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

1)「心」と「脳」 1-3)前頭前野(最高階層)の働き

1-3)前頭前野(最高階層)の働き

「1-2-1-5)意(意図、意思決定、行動化)」節で、意を担うのが前頭前野背外側部だと述べました。それについて説明して行きます。前頭前野背外側部は、脳の中で最高階層なので、下位の階層で行われる機能に介入できるので、意思決定、記憶、注意、実行など、思考(情報収集と集約)や行動(実行)の中心となる様々な機能をこの領域が関わります。背外側部は各階層で行われる機能をメタ認知します。

前頭前野背外側部は、大きく分けると、1)「作業記憶」(中央実行機能)と2)「意思決定」ですが、単独で様々な機能を遂行している分けではなく、必ず他の脳部位と連携(ネットワーク化)することで多種多様な機能を果たしています。

例えば前頭前野背外側部から視床背内側核へと伸びる経路は、1)「作業記憶」の実現に必須の役割を担っています。視床背内側核は、前頭葉、視床下部、線条体などと連絡し、体性内臓性情報を統合して前頭葉へ投射します。また感覚に基づく情動にも関係します。

前頭前野背外側部から尾状核へと伸びる経路は、二者択一的2)「意思決定」にかかわる情報が送られています。しかし即時的な意思決定(ぶつかりそうな自転車をとっさに避けるなど)という、限られた時間内に決定する場合は、脳の中の「大脳基底核」(無意識的反射的判断機能)という回路が主体(決定の最高階層)として働きます。

それまで経験してきたことを踏まえ、場合によっては推論を立て、検証して決定する場合は、大脳新皮質(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分かれ、人間の思考の中枢)の方が主体として働きます。

また利益(報酬)に関わる意思決定は、左背外側前頭前野から内側前頭前野へと情報が送られます。

このように、前頭前野(背外側部)は、他の脳部位と連係することで、多様な機能を果たしています。つまり縦横に連絡をして任務を遂行します。

注)前頭前野に関しては、「4)脳と前頭前野」であらためて詳しく説明します。