悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-2-2)自我と内発的動機付け

2-2-2)自我と内発的動機付け

「自立性、自主性、主体性」は、「内発的動機付け」が後押ししているように思えます。内発的動機付けとは、個人の内面(心)に沸き起こって後押して行動化させる「興味や関心や意欲」をいう。つまり「自立性、自主性、主体性」=「内発的動機付け」=「興味や関心や意欲」。

注)内発的動機付けに対して、外的報酬(金銭、表彰、水、食料など)の獲得を目指す時、その外的報酬が動機付けとなります。

自己決定感(自分で選んでの行動、主体性)があると、失敗してもやる気を失わず、次の糧にしようとする心の働きが生まれます。この時「前頭前野腹内側部」が働いています。前頭前野腹内側部は、恐怖を含む情動や衝動性を抑え込む働きをします。つまりそこが「やる気の喪失を押さえ込んでいる」のかも知れませんね。更には腹内側前頭前野は、主観的な価値(自分なりのポジティブ評価)の上昇に伴って活性化します。

ではその「興味や関心や意欲」はどこから湧いて来るのだろうか。既にある脳内知識体系と今目の前の状況(外部の現況)とに「誤差(差異)」があれば「違和感」が生じ、それを埋めようと「探索」します。例えば、「あそこに見慣れないものがあるぞ」というその「差異(いつもとの違い)を埋めようとする内的動機」が「好奇心(興味や関心や意欲)」です。その「誤差(差異)」を弾き出す脳部位として島皮質が有力候補に挙げられています。

注)学習の進歩それ自体が報酬になって更にやる気があがるというような考え方を「学習進歩仮説」という。それは成長自体を喜びとして感じ、この成長経験を求めてさらに頑張るという仕組みです。

注)「島皮質」については、後の「1-4-0)情報集積基地の島皮質と自己意識」で説明します。

もっと基本的なことを言えば、生物が安全に生存するには環境の中で、「望ましい状況」を予測して「現実の状況」との「差異」を評価して次に取るべき行動に反映させることが必要不可欠です。その差異の認識が好奇心の発生源です。しかし「望ましい状況」(理想)と「現実の状況」(現実)との「差異」は不安の発生源でもあります。好奇心と不安は同居しています。差異が大きいと感じると不安は更に恐怖へと変貌します。それに対して「小さな差異(不安)を解消しようとする気持」ちが「好奇心」です。

更に深堀りすれば、生物(生命)には、生体を安定した恒常的な状態に保とうとする仕組み(恒常性維持機能)があります。身体的恒常性維持機能だけでなく、心理的恒常性維持機能もあるのではないかと思えます。