悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-2-1-3)身体図式

3)「意識」と「その三つの理論」

3-2-1-3)身体図式

ちなみにですが、というのは、受動意識仮説には出て来ないのですが、無意識的に姿勢や運動を制御するために、脳内では「身体図式」が存在します。この身体図式は、様々な多重感覚によって、身体各部や身体各部の位置関係、身体と環境の関わりについて視覚的、触覚的、運動覚的な空間印象(イメージ)が総合・統合された身体体系で、いつ、どこで、どのように動かせばよいかの立体的情報体系です。この身体図式は、大脳新皮質(主に頭頂葉)に記録記憶されている身体中心基準であり、その過去に形成した基準と現在の体位や四肢の運動との比較によって現在の体位の認知をすることができます。その身体図式の脳内基盤を更に詳しく述べると、頭頂葉第一次感覚野、第二次感覚野、頭頂葉連合野で身体空間として組織化されています。

その中で楔前部(頭頂葉の深部)は、視空間イメージ、エピソード記憶の再生、自己処理を担当します。つまり楔前部は身体的心理的自己像形成部位です。また(後部)帯状回(脳梁膨大後部皮質)は、視空間や過去のエピソード記憶を参照にして、外界からの刺激情報や自己の行動を評価する機能を持っています。

個人性(特に歴史性)を生み出すのが「エピソード記憶」(自己同一性の情報源)だとしても、「身体図式」も同様に身体的な独立性(個人性)を生み出す情報源だと思われます。

ということで頭頂葉の内でも頭頂葉深部(楔前部)は、身体的自我(身体図式)と心理的自我(エピソード記憶)を重層的に統合する領域だと想像されます。

自我(「自分でする」)の形成初期は、頭頂葉(身体図式貯蔵庫)がもたらすこの身体的な独立性(「自分」)を感知して、更にその前にある運動制御機能(前頭葉運動野、「する」)が働き始める時期と合致します。その身体的自我を基礎として心理的自我が階層構造的に上に積み上げられます。