悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-4-1-4)島皮質と自他の区別と自己意識

2-4-1-4)島皮質と自他の区別と自己意識

ある姿が、自分自身の姿か他人の姿かを判断する時に島皮質が活動します。つまり島皮質は自他の区別をつける場所です。他人の目を意識すればするほど、右島皮質の活動と自己意識情動の増強とが相関(連動)します。鏡などによる自己顔認知に伴って自己意識情動が発生するが、その神経基盤として島皮質が重要です。ということで島皮質や帯状回が活性化している人たちは一般的に自己意識が強いです。

自己意識情動とは、他者が見る自己の姿を意識することから感じる感情です。

統合失調症に見られる幻聴は、音源が自身の思考由来なのか、外部環境由来なのかを判別する能力が低下しているため生じます。この場合には自己意識中枢とされる島皮質が機能不全や大きさの縮小が見られるようです。

島皮質の活動が強く抑制されると、自分が自分でないと感じる離人感(解離性障害の一種)が生じます。解離状態の者は、身体感覚を制御する島皮質と帯状回が大幅に活動が低下しています。逆に島皮質が過剰に活性化すると、すべてが完璧であり、平穏な確信に満ちていると感じるのに対して、島皮質の活動が低下すると、何ごとにも不安な心のざわめきを感じます。

その時々の内面状態、感情、身体の空間的位置、外部(外部環境)の出来事などなどの情報を統合して現状を認識するので、「意識の座」と考えられています。

特に「前部島皮質」は、身体の内外の全身の感覚を統合し、情動に変換し、更には一人の自分という主観的自己同一性を持つ自己意識を生み出します。例えば行為が他者ではなく「自分が行った」という判断は、1)後部帯状皮質(エピソード記憶)と2)楔前部(立体的身体感覚)と右側3)前部島皮質(自我意識)が関与します。島皮質は、身体の自己認識、主体性の感覚、身体の所有権の経験において役割を果たしています。