悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-2-1-2)「エピソード記憶」

3-2-1-2)「エピソード記憶」

受動意識仮説にとって大きな意味を持つということで、エピソード記憶(日常の出来事の記憶)について説明して行きます。陳述(宣言的)記憶の一つであるエピソード記憶とは、「個人が経験した出来事に関する記憶」であり、「意味記憶」に存在する各項目を結びつける地図(というよりもマインドマップ)のようなものです。このエピソード記憶は、意識的に何かを覚えようと努力していないにもかかわらず、経験した情報を無意識裏に記憶できる部分です。このエピソード記憶が自己同一性(誕生から現在まで一貫した存在)を支えます。

「エピソード記憶」に関しての脳神経基盤としては、内側側頭葉(大脳辺縁系海馬と海馬傍回)が重要な脳領域です。エピソード記憶の形成や想起に重要な脳領域は「海馬」ですが、覚えた記憶は、時間経過とともに、海馬から「大脳新皮質」に徐々に転送され、最終的には大脳新皮質に貯蔵されます。なお恐怖記憶や手続き記憶などは鳥や魚にも存在する記憶ですが、エピソード記憶は人間に特異的なものであるという説もあるが、犬や猫も、エピソード記憶(に近い記憶)を持っているようです。ラットも、過去の出来事を遡って思い出すエピソード記憶の能力があるそうです。特にそのエピソード記憶に関しては脳梁膨大後皮質(帯状皮質・帯状回)という脳領域が重要な役割を担っています。

注)海馬傍回は、自然や都市風景など場所(背景)の画像(イメージ)のような地理的な風景の記憶や顔の認識に関与します。