悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-2-1-1)「受動意識仮説」

3)「意識」と「その三つの理論」

3-2-1-1)「受動意識仮説」

前野隆司教授が唱える「受動意識仮説」とは、「意識は、自ら命令を出して脳を動かしているのではなくて、脳の自律分散処理(無意識領域)を受動的に見て、それをあたかも自分がやったかのように錯覚するだけ」だという説です。自分の体験として感じる主観的な体験はあるとしても、あるいは自立性や自主性まではあるかも知れないが、主体性まではないという。

意識は瞬時に現れるものではなく、視覚刺激が脳に到達してから意識が形成されるまでにいくらか時間(0.2秒)がかかります。 外から入ってきた感覚刺激が処理され、意識的な知覚になるまでにだいたい0.5秒ぐらいかかります。しかし私達はその時間的づれに気がつきません。脳が体験をさかのぼったり再構成するので論理的な順序で、同時間の出来事を体験しているように感じられます。

自からの経験を記憶していく「エピソード記憶」(自我同一性の情報源)を形成するためには、エピソードの主語となる主体(自分)を必要とするからだという。

受動意識仮説はいう。「意識」は、

1)「無意識の自律分散的な処理」を「まとめ」、

2)「エピソード記憶(個人的体験)」を「構成」するための「拠点」で、

3)「自己意識」(他者と区別できる自分(の存在)を認識する機能)で、

人・物・出来事に4)「注意を向ける働き(能動性意識)」でもあります。