悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

3)「意識」と「その三つの理論」 3-2-3)グローバル・ワークスペース理論

3)「意識」と「その三つの理論」

3-2-3)グローバル・ワークスペース理論

オランダ出身の心理学者バーナード・バーズが提唱した「グローバル・ワークスペース理論」をフランスの神経科学者のスタニスラス・ドゥアンヌが脳科学的に検証できるように発展させた理論「グローバル・ニューロナル・ワークスペース」があります。

注)「ワークスペース」(作業空間)は、仕事や作業をする空間、場所をいう。

瞬間的な短期記憶のような無意識に処理される情報は、脳内の限られたワークスペース(無意識)に留まっています。しかし、その情報が「注意によって選択」されて増幅されると、「前頭前野」を中心とした脳内に広く分布した神経細胞集団からなる「グローバル・ワークスペース」(意識領域)に入って、他のシステムから「自由にアクセス」できる状態になり、長期記憶や抽象的な思考などの様々な認知機能に利用できるようになります。

そして、情報がグローバル・ワークスペースに入ったときに、その情報が意識として浮かび上がるという。それらは、長期記憶、運動計画、抽象的な思考などさまざまな認知機能に利用可能となります。

しかし、この理論は二つの点で致命的欠陥があります。

1)注意を向けなくても意識に上る場合があります。2)グローバル・ワークスペースは、前頭前野を中心とした高次認知を司る脳部位にあると考えられていますが、脳の前頭前野に大きな損傷を受けた患者にも、健常者と変わらない意識があります。ということで、この理論の信頼性が揺らいでいます。