悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

4)脳と前頭前野 4-2)メタ認知

4-2)メタ認知

「1)「心」と「脳」」章で、脳を取り上げましたが、その章では、主に心について説明しました。ここでは脳機能に重きを置いて説明します。

「3)意識」章の「3-1-2-1)「メタ認知」」でメタ認知を取り上げました。あらためて、メタ認知とは、自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え1)評価した上で2)制御する機能です。言い換えると、自分自身の認知の過程を主観的に捉えて内省的に評価する能力(機能)をメタ認知と呼びます。認知活動側からいえば、メタ認知機能は自身(認知機能活動)を客観化することですが、メタ認知機能側から見れば、認知内容を自身(メタ認知機能)に取り込んで主観化する行為です。心はどちらの立場に立つこともできます。

メタ認知をしていない認知活動内容は今だ(メタ認知にとって)主観化されていない、言い換えると、意識(自我、主体化)内に取り込んでいないので、制御できない状態にあります。

まとめると、認知活動側からすれば、メタ認知機能は一段上からの客観化ですが、メタ認知機能側からは、認知活動内容を意識内部に取り込む主観的活動です。

具体的にはメタ認知的活動とは、

気づき・知覚・予想・点検・評価といった1)「メタ認知的観察」(内容把握)と、そこから次のステップとして目標設定・計画・修正などといった2)「メタ認知的制御」(応用)との二つの側面があります。

メタ認知は、一般的には5〜6歳から持ち合わせるようになり、9〜11歳までに育っていきます。しかし幼児期(3歳頃)にも、メタ認知の原初型とも呼べる能力が育まれます。7歳以下の子供の場合には、メタ認知能力は特定の領域の範囲内にとどまるのですが、8歳以上になると全般的なメタ認知能力が身につき始めます。つまりメタ認知は一気に開花するのではなく徐々に花開いていきます。

しかしその前段階として、鏡に映る姿が自分であり、身体は自由に自分の意思で動かせることに「気付く」のが自己認知です。それが自我の芽生え(1歳半~2歳頃)です。