悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

8)悟りと漸悟 8-1-2)イスラム神秘主義

8-1-2)イスラム神秘主義

イスラム教において精神修養に重きを置いた宗派が9世紀以降に生まれ、修行によって自我(自我意識)を滅却し、忘我の恍惚の中で、二元的対立を超えた神との神秘的合一を究極的な目標とする内面化運動を、特に「イスラム神秘主義」という。神との合一とは、自己についての意識(自我意識)がなくなり、神の中に包摂されて一体化(無我)した状態をいう。

精神的な修行として、神の名を繰り返し唱え思念を神に集中させる方式です。あるいは回旋舞踊という身体の運動を通したスーフィズムの修行方式もあります。

注1)仏教での盆踊りや念仏、読経は集中や忘我などと同じ趣旨です。

注2)神秘主義とは、絶対者(神、最高実在、宇宙の究極的根拠など)を、その絶対性のままに人間が自己の内面で直接に体験(合一)しようとする哲学や宗教思想をいう。

ある(イスラム神秘主義を奉ずる)修行者はいう、「蛇がその皮を脱ぎ捨てるように、わたしは自分という皮を脱ぎ捨てた。...私は彼だったのだ」。(私=彼=神)。この表現は、「女神イシスを覆うヴェールの物語」を思い出させます。