悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

5)無意識と内向性 5-4)無意識と意識

5-4)無意識と意識

広い意味の意識(心全体、自己)には、意識している、しようと思えばできる部分(顕在意識)と、意識していない、意識できない部分(無意識、潜在意識)があります。心全体を100%としたら無意識が90%~95%以上を占めています。なお無意識といっても、意識が消失した状態(ノンレム睡眠状態)ではなく、意識(前頭前野)には達していない情報群を意味します。入って来た情報は下から上へと上昇(ボトムアップ)するが、統合力の弱い段階にある情報群は意識にまで到達し得ないので無意識に留まります。だから「意識と無意識の差」は単に「情報統合レベルの差」に過ぎません。無意識レベルにある情報は、他と統合、あるいは大きな神経回路に統合されることで意識レベルへと上昇できます。

注)「3-3)情報統合理論」で述べたように、情報が統合されるに連れて、意識強度(レベル)は高くなって行きます。「グローバル・ニューロナル・ワークスペース」理論では、情報が「グローバル・ワークスペース」(意識領域)に入ったときに、その情報が意識として浮かび上がります。それらは、長期記憶、運動計画、抽象的な思考などさまざまな認知機能に利用可能となります。

例えば、夢遊病状態では、意識(前頭前野の働き)がなかったとしても、脳幹や大脳基底核を最高拠点として感覚器官と運動器官は働いているため、最低限度の外界を知覚し、記憶を呼び起し、扉をあけたり、階段を降りたりなどの行動を決定し実行することも可能です。であっても、メタ認知(上位意識・前頭葉)が作動していないので周囲の状況や人を認識する高いレベルまではできていません。夢遊病で徘徊するときは、ノンレム睡眠(高次脳の休息)という最も深い睡眠時に入っていますから。

このように人間の行動は、90%以上が無意識に行われています。判断に関しても97%もが無意識下に行っています。生理的な、生命維持に必要な行動(脳幹に由来する)においては、ほとんど全てが無意識によって行われています。また反射的習慣的行動も無意識が主導権を取ります。しかも意識より無意識のほうが圧倒的に強力です。