悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

5)無意識と内向性 5-3-2)瞑想と内向性と注意

5-3-2)瞑想と内向性と注意

瞑想とか坐禅をするとは、注意(意識)を心の中に内向させることです。瞑想(坐禅)とは、無意識裏に働く心(90%以上が無意識領域)をのぞき観察することです。瞑想すると神経伝達物質GABA(ガバ)の生産が促進されます。抑制性GABAは、脳・脊髄で精神を安定させます。具体的には交感神経の働きを抑制して興奮した神経を落ち着かせたり、ストレスを緩和したり、睡眠の流れを整えたりと、ブレーキの働きを担っています。

瞑想して目を閉じると外部からの刺激が減り、心の内側を見つめることに集中できます。視床は感覚(情報)の管理制御担当です。入ってきた感覚情報の一部を脳内深くに送り込み、他のシグナルの侵入を阻止することで集中力を高めます。瞑想によって、流れ込む情報量は大きく減少します。

見張り番を務める網様体は、外部からの刺激を察知すると、応戦態勢を整えて警戒するよう脳を喚起します。瞑想することで、そういった警戒体制は解除ないし緩和されます。注意起動させると青斑核のノルアドレナリン(覚醒度アップ機能)の産出量が増加するが、瞑想でそれが減少します。逆に瞑想によってセロトニンが活性化して、意識を覚醒する促進系のアセチルコリンの過剰な働きを抑制します。

注)セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報を制御し、精神を安定させる働きをします。

なにかに能動的に注意を向けるには、中央実行機能(神経ネットワーク)を使います。意識的に自分の注意を向ける司令塔です。この中央実行機能は内向外向を問わず意識的能動的注意集中機能として働きます。瞑想をすると注意制御に関係する前帯状回の背側部だけは活動が続きます。なお島皮質は感情の制御や痛みの感覚と深い関わりがあり前帯状皮質と同じように注意力にも関係があります。集中瞑想の間、前頭前野(特に内側前頭前野)の活動は広い範囲で抑えられています。注意を分割し、自分と周囲の世界の関係について視野を広げて捉える観察瞑想時(中央実行機能は作動せず)には、海馬傍回が活動的になります。自然風景や都市風景などの場所の画像、地理的な風景の刺激を呈示された際にそこが活動します。

瞑想(特に観察瞑想)することによる効果としては、脳内の前後左右、即ち、上縦束(前頭部と後頭部を連絡)と(左脳と右脳を連絡)脳梁の結合性を高めます。更には脳梁の中央部から前部にかけての白質密度が増加します。(自己意識、身体図式とエピソード記憶を司る)楔前部は、睡眠や麻酔で意識がない時には機能が低下します。瞑想すると左側頭頂間溝周辺の灰白質が肥厚します。というのは、瞑想で、他者への共感に関連する部分である側頭頭頂接合部が大きく活性化するからです。