悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

4)脳と前頭前野 4-5-2-1)前頭前野全般

4)脳と前頭前野

4-5-2-1)前頭前野全般

人間の脳の最終的成長成熟部位は前頭葉、特にその内でも前頭前野です。と言っても、全く手付かずではなく5歳頃から部分的に成長が始まりますが、なかなか成熟とまでは行きません。成熟にはかなりの経験を必要とするからです。必要(経験)は成長の母です。

前頭前野は、大脳新皮質の中の約30%を占めていますが、動物の中でもっとも占有領域の広いチンパンジーなどでも17%(7~10%の説もあり)くらいです。前頭前野は、系統発生的に人で最もよく発達した脳部位であり、個体発生的に最も遅く成熟する脳部位です。

前頭葉全体に対する前頭前野比は乳児期から8歳頃まで年齢とともに緩やかに増大し 8~15歳の思春期前後で急速に増大します。前頭葉と前頭前野は、ワーキングメモリー(作業記憶、思考)、反応抑制、行動の切り替え、企画計画、推論、集中などの多様な認知と実行機能を担っています。また、高次な情動や動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っています。さらに社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択などと、多種多様な機能を担います。前頭前野の内でも前頭極は、推論時に活性化します。特にいくつかの処理を並行的に行う、関係性の統合を行うなど、ワーキングメモリー負荷の高い条件で推論を行うときに重要な役割を果たしています。

このような前頭葉の発達の順序性は、まず1)行動抑制が出現して外界からの反射的自動的反応支配から解放されます。次に2)表象能力が誕生し、その次に3)ワーキングメモリ(作業記憶)や、実行機能が順次確立します。