悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-3-1)個的自我(自我同一性)の確立

2-3-1)個的自我(自我同一性)の確立

あらためて自我の話に戻ると、「自我が芽生え」始めて「自立心」が育ちます。その自立心の元でやがて「自我が確立」されると、他人に振り回されることが減り、自分自身の人生を安定して進めることができます。自我が確立するとは、身体的な自立は基より精神的な自立(自律)も成立することです。

自我とは、知覚・思考・意志・行為などの自己同一的な主体として、「他者や外界から区別して意識される自律的な自分」です。哲学の自我は「認識する主体」としての自我でしたが、心理学の自我は他者とは「独立した能動的主体」という性質が中心に存在するように思えます。

「他者からの指示で行動するのではない」自立心は、「自ら行動」する「自発性」(自主性)と「自分の判断」で決める「主体性」などの性質を併せ持つことで成り立ちます。自立心を持って自発性と主体性を発揮しながら、つまり自律的に自己を管理するためには、自分自身の状態を客観的に知る(メタ認知する)ことが必要です。そのメタ認知能力の発達は「行動主体としての自己」に気付くことから始まり、5~6歳頃から「周囲の状況と自己の能力を考慮して起こりうる事態を予測」するなど、いくつかのメタ認知的機能について成人と同様の能力が芽生えています。

注)メタ認知については、「3)「意識」」章で説明します。