悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

2)自我と島皮質 2-3-2)社会の中での自我同一性(自我)の確立

2-3-2)社会の中での自我同一性(自我)の確立

自我の確立は、前半部分(主に小学生時代)は「個人内での自我」の確立ですが、後半部分(思春期)は「社会の中での自我」の確立です。後半部分での社会性自我の確立に失敗すると社会性の確立が失敗することとなります。つまり社会性をも組み込んだ上での個人性自我の確立という矛盾をはらんだかなり困難な自我の確立を目指さねばならないのです。

注)社会性とは、「社会生活を営む素質・能力」をいう。

人は、家族、友人、教師などとの対人関係の中で社会化(社会の中の一員と成ること)されながらも自我をも発達させていきます。それら他者(家族など)との関係で子供としての自分、上下関係の中での自分、学生としての自分、友達などの対等関係での自分などさまざまな社会の中での役割を年齢に従って個別的にバラバラに経験を積みながら習得形成していきます。

このようにして獲得されてきた様々な役割を取捨選択して首尾一貫し統合した揺らがない体系的「人格的同一性」を形成することが青年期の発達課題です。哲学することが発達課題です。これが矛盾なく全体として統一のとれた体制(自己同一性)をつくっていれば、自分がだれであるかを明らかにすることができ、自我同一性(自己同一性、アイデンティティ)が形成されます。

注)人格は、統一的な個人の行動傾向、全体的にとらえた統一体としての個人の特徴をいう。

要約すると、個人は共同体(社会)の価値観に自己を同一化しつつ、あるいは社会の価値観を自己の中に取り入れつつ、様々な社会的役割を積極的に引き受けることによって社会的自己(社会性自己)を確立します。これら複数の役割を統合した上での「根源的な自己」を「自我同一性(自己同一性)」という。

上の「1-0)自分(自我)とは」で、「哲学」の定義として、「根源のあり方や原理を求めようとする学問」、「経験からつくりあげた人生観」は、まさしく、「個人にあっては、自己同一性を確立する営み」そのものです。つまり誰もが哲学をしながら自我(自己、人格)を確立して行く存在といえます。

要するに、自我とは、今まで経験を蓄積して、それらを一つの体系的なまとまりとして形成された知識(経験)体系(自己同一性)だといえそうです。哲学は、自我の「構造面」(仕組み)を説明して、心理学は自我の中身(経験、情報)を説明しています。