悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

9)成長とそれを促進する理論・方法 9-1)アブラハム・マズローの欲求段階説

9-1)アブラハム・マズローの欲求段階説

成長は、統合(統一)が増すことでもありますが、階層が増すことでもあります。その代表的な理論が、アブラハム・マズローの欲求段階説です。これは、きわめて大まかな意味で生物の系統発生をたどっている個体発生ともいえます。「4)脳と前頭前野」章の「4-3-1)心の成長=脳の成熟」節で述べましたが、「生物発生原則」をたどっているといえます。宇宙では宇宙原理に基づいて自発自展するので、個々人の身体も心も脳もごく大まかな成長過程は似通っています。

ではマズローの自己実現理論(欲求階層説、欲求段階説)を簡単に説明しますと、人は順調に成長して行く過程では、衣食住という基本的な欲求「生理的欲求」が満たされれば「安全欲求」へと階層を上昇し、それが満たされれば、更には人から好かれたいという「社会的欲求」へと次の階層へと上昇し、その後自分を尊重して欲しいという尊厳欲求(承認欲求)へ、更には次の自分の可能性を最大限に発揮したいという「自己実現欲求」へと登っていきます。まあしかし人生を各の如くに順調に各階層を登って行く人は稀ですが。

マズローは、その自己実現欲求の更に上に「高原経験」(自己超越)をのせました。自我を超越するというこの段階に至って、欠乏感から解放されます。禅では、この意識状態を力強い円(円相)で表現します。(一)円相とは、悟りや真理、仏性、宇宙全体などを円形で象徴的に表現したものです。円相は、欠乏感から解放され一応の自己の統合(統一)の完成を表します、月や地球が円相である如く。

マズローの話に戻ると、自己超越とは、自己意識(自我)の超越です。自分という意識が消える感覚であり、無我(の境地)ともいえます。マズローの欲求段階説では、6段階の階層を登って最高地点に立つことによって悟りを得ることができます。