悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

8)悟りと漸悟 8-2-3-2)扁桃体と前頭前野との関係

8-2-3-2)扁桃体と前頭前野との関係

扁桃体は最初は単なる感情の座(中枢)だけでしたが、経験を経るにつれて感情だけではなくどんどん事業拡大して行きます。

初期段階では、ごく普通にポジティブな(楽観的)感情からネガティブな(悲観的)感情まで全てを感じます。ただし扁桃体のレベルが上がると、ただ感情を幾分知的に認識しても、心臓辺りに感情を感じるがその感情を引きずることは少ない、つまり頭にまで昇って来ません。それでも、一瞬イラっとして脊髄反射してしまうが、すぐに通常の平穏な心に戻ります。嫌な気持ちが生じた時にもメタ認知(前頭前野)(抑制制御機能も持つ)は働きます。今何だか嫌な気持ちを感じているなと、自分(メタ認知)が自分(感情機能)を上から観察している状況です。

段階が進むにつれて、感情を上(前頭前野)から制御する能力が強くなって冷静な状態が長く続くに従って、萎縮させるようなネガティブな感情は減少し、逆に意欲的な前向きにさせるようなポジティブな感情だけが残るようになります。より詳しく説明すると、腹側前帯状皮質と内側前頭前野(眼窩部)は、扁桃体の過剰な活動を制御抑止します。逆に、扁桃体は自分にとって好きなことや心地良いことだと判断すると、ドーパミンが放出され、前頭前野、側坐核、海馬、視床下部などの領域へ伝えられます。前頭前野は扁桃体に対してブレーキを踏んだりアクセスを踏んだり自在にできるようになります。

最終段階では、完全自動化されて一切の感情を感じなくなります。

感情と脳の構造との関係を説明します。大脳辺縁系の中の扁桃体が情動(感情)の発現に重要な役割を果しています。この扁桃体と密接な線維連絡(配線)のある視床下部やこの部位と線維連絡のある中脳中心灰白質も、情動の表出(表情など)と自律神経系の反応(心拍数、呼吸、血圧の変化)や行動面での反応(すくみ反応、逃避反応、攻撃反応など)を引き起こします。 その情動系を上位から制御するのが、大脳新皮質の前頭前野(特に前頭眼窩野)です。若い頃は扁桃体が強力で前頭前野が力負けすることも多々ありますが、前頭前野は使えば使うほど機能強化されていきます。

注)ヤコブレフ回路(大脳辺縁系で情動と記憶に関与する中枢)は、

前部側頭葉(側頭葉前部:側頭葉極:記憶)-扁桃体(感情)-視床背内側核(感覚情報)-前頭葉眼窩野(+帯状回)(抑制)-鉤状回ー前部側頭葉というサーキット(閉鎖回路)になっています。回路が閉じていなければ電流は流れませんが、閉鎖回路では電流が流れます。神経細胞に配線コードが接続されれば、神経回路(神経ネットワーク)が形成されます。そこを流れる電流は特定の脳部位から外部へ流れ出ます、あるいは流入します。