悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

6)無我と執着 6-2-0)(無意識的)執着とは

6-2-0)(無意識的)執着とは

無我とは、「執着を否定した上で超越」することです。言い換えると、「囚われのない融通無碍の心」です。ではその執着とは何でしょうか。ごく簡単に言えば、執着対象に「心をとらわれて、そこから離れられない」(そこに「生きる根拠」を置く)ことです。

ではその執着はどこから来るのでしようか。それは、それを「失うことを恐れ、しがみつきたい気持ち」からです。ではそれはそもそもどこから来るのでしょうか。赤ん坊が親や養育者の後を追いかけたり、その姿が見えなくなると不安になって泣きだしてしまうのを「後追い」という。だいたい生後10ヵ月から1歳半(あるいは2歳)頃まで続きます。生後7ヵ月頃には、視力が発達してきて人の顔を認識できるようになり、愛着心が芽生えます。

それは人間に特有な現象ではなく、動物には、発達初期の限られた期間だけに見られる刷り込み(インプリンティング)という現象があります。それは、鳥類のヒナが孵化直後に初めて見た動く存在を追いかけるようになる現象(後追い)です。より具体的にいえば、生まれた直後に目の前にあった、動いて声を出すものを親だと覚え込んでしまう学習方式です。後を追う行動方式は決定されているが、中身(内容)は未決定で誕生後に確定します。刷り込み行為は、基本的な部分は先天的、遺伝的に持っている構造(機構・システム)であり、そこに後天的に変更可能な中身(情報)を入れることで完成します。

人においても生後6ヶ月頃の乳児に見られる親に対する愛着形成やその後の言語獲得や味覚などの好み形成も、刷り込みに似た現象と見なせます。