悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

6)無我と執着 6-2-1)成長後の執着

6-2-1)成長後の執着

大人になってから後追いが端的に現れた行為がストーカーです。まあこの場合は「空の巣症候群」だと思いますが。ともかく失ったり、愛されなくなったり、孤独になったりするのが怖いから執着します。大人になってからの後追いは怖いですが。

空の巣症候群とは、子どもが成長して巣立って、巣(家)が空っぽになってしまったことから来る、喪失体験として虚無感や寂しさ、空しさなどを感じることです。その感情に耐えられないと空の巣症候群に陥ります。失恋も同じ感情、症候群に襲われます。

それに似た症状として、空白恐怖症があります。それは予定表をスケジュールで埋めないと不安になる現象です。空白を埋めると安心を得られます。空の巣症候群や空白恐怖症の共通項は安心(安心感)を他者・他物から得ることで叶えています。つまり大元としては依存心から来ています。自立(自律)心を完全には確立していません。

その不安・恐怖から逃れて安心を得られる対象に執着します。その執着対象は、単に人に対してだけではなく、お金(財産、土地)、地位、仕事、名誉、予定などなど無数といえるほど有形無形ともどもありますし、その個人にとって価値ある大切な(執着心を掻き立てる)ものなので個人個人実に様々です。

自分自身に無価値感(自分に自信がない、自分には価値がない)を感じていると、価値を自分自身に求めるのではなく、自分の外側に与えてくれる幸せを求めます(青い鳥症候群)。

注)モーリス・メーテルリンク作の童話「青い鳥」の中で、主人公のチルチルとミチルが幸せの象徴である青い鳥を探しに行くが、意外と幸せの青い鳥は身近にあることに気付かされることから、今よりもっといい人が現れる、今よりもっといい仕事が見つかるなど現実を直視せず根拠の無い「青い鳥」を外に探し続ける人たちを指す言葉。

ところが、やっとの思いで手に入れたと感じた「自分を幸せにしてくれる人や物」(青い鳥)を今度は失うことを恐れ、失わないようにしがみついてしまい、執着心が強くなってしまいます。つまり自分に幸せをもたらす人やものを失わないようにそれらに執着します。失った経験が、空の巣症候群(虚無感や寂しさ、空しさなど)を感じる怖さ(辛さ・苦しみ)を知ってしまうからです。それから逃げるためにも執着してしまいます。