悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

6)無我と執着 6-1)無我とは

6-1)無我とは

この第六章の主題(テーマ)は、「無我」ですが、無我で思い出されるのは、仏教の用語としての無我でしょう。仏教でいわれる「無我(諸法無我)」とは、あらゆる事物は、「表面へ現れた現象」(構造と機能でいえば機能)として生成しているだけであり、それ自体を根拠づける「不変的な本質(根本)は存在しない」という意味の仏教用語です。つまり、人間もその心も身体も無我(実体のない現象)だということを表します。

人間を含めてあらゆる存在や現象は根拠のない無我ですが、人に対して用いられる「無我」は、現実問題として「自我を持ってしまっている」ので、無我へ至る方法としては、根拠のないものへの「執着」、特に我執(大まかには自我)への「否定」をした上での「超越」を意味します。今まで自我に執着(根拠を置くこと)する故での日々波立つ心から、無我を実践し続けることで清浄で平安な涅槃の理想が達せられるという。

注)涅槃とは、煩悩の火が消え、本能から解放され、心の安らぎを得た状態で、仏教が理想とする悟りの境地でもあります。