悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

4)脳と前頭前野 4-4)脳の成長(成熟)とは

4)脳と前頭前野

4-4)脳の成長(成熟)とは

脳は、ごく大ざっぱに分けると、下から、1)脳幹(生命維持)、2)大脳辺縁系(感情と記憶)、3)大脳新皮質(思考)と階層構造的に積み上がっています。生まれた時からこれらは全て構造的には揃っています。揃ってはいますが機能していません。つまり構造として存在するが機能(働き)していません。誕生時には存在すれども機能せずです。

注)脳幹は、間脳、中脳、橋および延髄から構成されています。呼吸、循環など「生命(維持)活動」の基本的な営みを支配するだけでなく、「知覚情報」を大脳皮質に中継したり、末梢に向かう「運動指令」を中継する機能をも担当しています。

機能するためには、神経細胞の配線コード(軸索と樹状突起)を1)シナプス化(連結)して神経回路を形成する必要があります。それと、裸の配線コードを2)被膜化(髄鞘化)する必要があります。裸の配線コードでは、例えると電流漏れが起こり、情報がスムーズに流れてくれません。

神経細胞という構造があっても、1)シナプス化とその後に2)被膜化(髄鞘化)が行われて神経細胞は上手く機能します。シナプス化が単機能から多機能化へと性能を押し上げて行きます。被膜化はスピードアップ(高速化)をもたらします。

しかし、シナプス化と髄鞘化の工事は、1)脳幹、2)大脳辺縁系、3)大脳新皮質という順序で、即ち下(一階)から作業が進められ、最後的に完成するのは、20歳前後です。脳の成長成熟には20年という歳月を要します。といっても、脳幹の工事が完了するまで次のステップに進まないというわけではなく、グラデーション的な進み方をします。

脳の成長成熟にとって、更にもう一つ決定的に必要なことは、3)経験(情報吸収)です。被膜化(髄鞘化)までは遺伝子によって行われますので自動的な作業です。しかしシナプス化は経験という形での情報吸収がなければ成長成熟して行きません。使った部分だけが成長成熟します。