悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

6)無我と執着 6-3-6)竹取物語と執着

6-3-6)竹取物語と執着

平安時代前期に創作された現存最古の物語文学といわれる「竹取物語」は有名な物語ですが、私は、「執着」というテーマでそれを読み解きます。

翁が竹を切ると黄金が入っていてお金持ちになります。このことで翁は仏教的には俗人だとわかります。お金持ちになっているのに、否お金持ちだからこそ、最終的にはかぐや姫を失ってしまいます。かぐや姫に当時の社会的な成功者との玉の輿結婚をさせたい祖父母(俗人)と仏教的な成功(悟り)を目指したいかぐや姫(修行僧)との葛藤物語りと見ます。

「祖父母=自我、かぐや姫=無我を目指す修行僧」という構図を描きます。次から次へと求婚して来る成功者(執着)を(解けない公案を与えることで)心理的に殺して、つまり殺仏殺祖して月の世界(悟り状態)に達するというテーマを含んでいると感じました。執着したくなるような素晴らしい対象を次から次へと難題(公案)を吹っ掛けて殺すことで無我を勝ち取ることができます。

竹取物語が成立したのは平安時代初期頃で、空海が作者だという説すらもあります。竹取物語は悟りへの過程を語り、最終的に月世界(悟り状態)へ昇ります。ちなみに悟り状態を仏教説話などでは「羽衣」で象徴させます。悟りを開いたこと(時間空間の超越)を示すために、「羽衣をまとう」。羽衣を脱ぐことで人間(俗、自我)界に戻ることを暗示します。「羽衣」にまつわる物語は、羽衣によって天から降りてきた天女と、その天女を我がものとする男という基本的な登場人物で成り立ちます。その類型として、鶴(天女)とそれを助けた男の物語もあります。

日本には、雲水、行脚僧、旅僧が昔から日本全国を修行して回りました。また万葉集に遊行女婦が巫女舞などの形で宗教伝播を目的として巫女が行脚して回りました。このように様々な文化が都から地方へと幅広く伝搬して行ってます。

竹取物語