悟りは自我から無我への相転移

悟りは自我から無我への相転移。悟りを哲学、心理学、宗教、脳科学から解説します。

1)「心」と「脳」 1-1)「心」とは

1)「心」と「脳」

1-1)「心」とは

仏教には、「直指人心」(自己の内にある心をよく凝視して、直感的にそれをつかみとる)とありますので、先ずは「心」を探求して行きます。であってもこの心に関しては、仏教的知見(用語)ではなく、哲学的、心理学的、科学的知見から説明して行きます。

昔は、心を見る(探求する)ために、坐禅、瞑想、内観、あるいは思索や観察、即ち注意を内向して来ました。今はそれに付け加えて脳を調べることで、様々な科学的知見が得られ始めています。

脳は医学的には直接見ることができますが、その脳を見ても「心」は見えません。というのは「心とは直接目には見えない働き(機能)」だからです。しかしその働きの出所は物質的な脳(構造を持つ物質)です。物を叩くと音(働き)が出ます。物対脳=音対心。

「心」を機能(働き)で分ければ、1)知覚(五感)、2)情(感情)、3)記憶(情報の取り込み)と学習(新しい情報の取り入れ)、4)知(思考、言葉・イメージ・情報の組み立て)、5)意志(意図、意思決定、行動化)、6)意識などの心理的過程です。

別の分類をすれば、「心=意識+無意識」です。こちらの分類に関しては、別の章を立てて説明します。